みなさんの中には、様々なアレルギー症状やアトピー症状に悩まされている方も多いのではないかと思います。一昔前までは、「花粉症」という言葉もあまり耳にしませんでしたが、なぜ近年になって、アレルギー症状やアトピー症状が増えているのでしょうか? そもそもアレルギーやアトピーとはなんなのでしょうか? 本コラムでは、その全体像と有効な対策について考えていきたいと思います。
第一回は、以下について概略を説明してまいります。
- 増え続けるアレルギー、アトピー
- アレルギー、アトピーの全体像
- アレルギー反応はなぜ起こるのか?アレルギー、アトピーの全体像
- なぜ近年、アレルギー症状やアトピー症状が増えているのか?
①.増え続けるアレルギー、アトピー
アトピーを含むアレルギー疾患全般が第二次世界大戦以降、日本を含む世界各国で急増しています。正確な患者数は不明ですが、日本では約30%~40%の方が花粉症に悩んでおり、約10%の方がアトピー性皮膚炎を患っていると言われています。
②.アレルギー、アトピーの全体像
主なアレルギー疾患は上記の6つです。アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患の1つに位置づけられます。
補足1)この他にも薬物アレルギーや昆虫アレルギーなどがありますが、日本のアレルギー対策基本法で対象とされているものは上記の6つとなります。
補足2)アレルギーになりやすい体質の人が成長するにつれて様々なアレルギー症状を発症することを「アレルギーマーチ」といいます。多い症例としては、幼児期にアトピー性皮膚炎を患った人が、食物アレルギー⇒気管支喘息⇒アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎と次々に発症するケースです。これにより、幼児期のアトピー性皮膚炎の管理が、その後のアレルギー疾患の発症予防につながる可能性があると言われています。
③.アレルギ―反応はなぜ起こるのか?
免疫バランスが良くなく、免疫システムが本来無害な物質(アレルゲン)に対して過剰に反応し、不都合な免疫反応(くしゃみ、鼻水、発熱など)を引き起こしてしまう現象です。
④.なぜ近年、アレルギー症状やアトピー症状が増えているのか? (免疫バランスが良くない人が増えているのか?)
様々な要因が複合的に絡んでおり、明確に整理された結論は出ていませんが、一般的には以下の要因が大きいと考えられています。
- 衛生状況の変化
- 免疫には生まれながらに備わっている自然免疫と、生まれた後に獲得する獲得免疫がありますが、幼少期の環境が衛生的すぎると、獲得免疫が減り、免疫バランスが正常にならないケースがあると考えられています。
- 環境の変化
- 花粉の増加(スギは樹齢30年を超えると花粉をたくさん飛ばしますが、日本のスギは高度成長期に植えたものがほとんどのため、花粉をたくさん飛ばす木が増加してきていること。また、都市化により花粉を遮る樹木がなく、花粉に暴露しやすいことなど。)
- 建物の密閉化と冷暖房の普及により、人が過ごしやすくなる一方で、ダニやカビも繁殖しやすいこと。
- 大気汚染(PM2.5など)の増加
- 室内飼いペットの増加
- 食生活の変化
- 動物性脂肪の摂取増加が体内の炎症反応を促進する。
- 食材のグローバル化により、様々なアレル物質を摂取する。
- ストレスの増加
- 特に成人発症型アトピー性皮膚炎では、精神的ストレスが大きな要因と言われています。
⑤.有効な対策は何か?
詳細は後日、整理していきたいと思いますが、アレルギー発症を予防するためには、以下の方法が有効とされています。
- アレル物質の回避(花粉症の場合の具体例)
- 花粉情報をチェックし、飛散量の多い日や時間帯の外出を控える。
- マスクやメガネを着用して、花粉やほこりの侵入を防ぐ。
- 帰宅時に衣類や髪についた花粉をはらう。
- 室内環境の整備
- こまめな掃除で室内のほこりやダニを減らす。
- 布団や枕カバーなどをこまめに洗濯・日干しする。
- 花粉が多い時期は、洗濯物は外干しを控え、室内干しにする。
- 空気清浄機を効果的に使用する。
- 生活習慣の改善
- 手洗いやうがいを適宜行う。
- バランスの良い食事と適度な運動で免疫機能を正常に保つ。
- 十分な睡眠をとり、ストレスを軽減する。
- スキンケア(アトピー性皮膚炎の場合)
- 保湿剤を使用し、皮膚のバリア機能を維持する。
これらの対策を日常生活に取り入れることで、アレルギー症状の予防や軽減が期待できます(個人によって効果的な方法は異なるため、症状が気になる場合は医師に相談することが重要です)。
次回は、アレルギー疾患とアトピー疾患について、その歴史を古代まで遡って見ていきます。